根抵当権の元本確定にまつわるエトセトラ

前提:

「弁済」を登記原因として根抵当権の抹消登記を申請するためには登記記録上元本が確定していることが明らかである場合を除いて、前提として元本確定の登記をすることを要する。「解除」「放棄」は元本確定の前後を問わずすることができる。

A.元本の確定が登記記録上明らかなとき

 →元本確定登記不要

  1. 元本の確定期日が到来したとき[確定期日の午前0時]
  2. 相続による根抵当権の移転又は債務者の変更の登記をしたが、合意の登記を相続開始後6ヶ月以内にしなかったとき[相続開始時]
  3. 根抵当権者が滞納処分による差押えをしたとき[差押時]
  4. 根抵当権者が抵当不動産について競売もしくは担保不動産収益執行または物上代位による差押えの申立てをしたとき[申立時]
    • 競売手続もしくは担保不動産収益執行手続の開始または差押えがあった場合に限定
    • 共有根抵当権の共有者の一人からしても、さしつかえない
  5. 個人の債務者兼根抵当権設定者が破産手続の開始決定を受けたとき[破産手続開始決定時]
    • 登記記録に破産の登記がされる

B.元本の確定が登記記録上明らかではないとき

 →元本確定登記必要

  1. 元本確定前に根抵当権者または債務者が合併により消滅した場合、根抵当権設定者が元本の確定請求をしたとき[合併の時]
  2. 元本確定前に根抵当権者または債務者を分割会社とする会社分割があった場合、根抵当権設定者が元本の確定請求をしたとき[会社分割時]
  3. 根抵当権設定後3年を経過後、根抵当権設定者が元本の確定請求をしたとき[元本確定請求から2週間経過時]
  4. 根抵当権者が元本の確定請求をしたとき[元本確定請求時]
  5. 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始または滞納処分による差押えがあったことを知ったとき[知ったときから二週間経過時]
  6. 個人の債務者(非根抵当権設定者)が破産手続の開始決定を受けたとき[破産手続開始決定時]
    • 債務者は記載事項にすぎないので差押えの登記がなされないため
  7. 法人の債務者または根抵当権設定者が破産手続の開始決定を受けたとき[破産手続開始決定時]
    • 法人が破産した場合は、会社登記簿にその旨が記載され、不動産登記簿には登記されない。

※債務者は確定請求ができない。根抵当権者が確定請求したときは請求のときに確定する。設定者が確定請求したときは、その請求が根抵当権に到達してから2週間経過したときに確定する。どちらも登記が必要。

根抵当権者が抵当不動産に競売等を申立てたときは、申立てのときに元本が確定し、第三債務者が差押さえを申立てたときは、それを根抵当権者が知ったときから2週間を経過した時に元本は確定する。前者には登記は不要で、後者は登記が必要。前者は確定する時期が他の書面によって分かるが、後者は「知った時」が分からないため登記が必要ということ(かも?)。それから、前者は申立てを取下げても元本は確定したまま、後者は(2週間経過した後でも)もう競売開始や差押えの効力が消滅したときは元本は確定しなかったものとみなされる。