不動産物権の公示制度

物権の設定及び移転は、意思表示のみによって効力を生ずるから、必ずしも公示されるとは限らない。むしろ制度的には、実際の権利関係と公示の内容とが一致しない場合が生ずることを見込んでいるといえる。それでは、このような不動産物権の公示制度の役割はどのようなものであるのか。一般に、公示されていない権利は存在しないという、いわば『権利の不存在』についての信頼を保護しているといわれている。これは、公示されていない権利については、何人からも主張されることはないことを意味する。反対に、公示された内容を信頼して取引をしたとしても、取引の相手方が無権利者である場合には、公示されている権利を取得することはできない。なぜなら、何人も、自己が有するより多くの権利を他人に譲渡することはできないからである。つまり、公示されているとおりの権利が存在するという、いわば『権利の存在』についての信頼を保護しているわけではない。

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