農地法所定の許可とか

農地法所定の許可が必要な登記原因

必要なもの 売買、贈与、死因贈与、買戻、特定遺贈、共有物分割、協議に基づく財産分与、従前の所有権登記名義人ではない者への真正な登記名義の回復、合意解除
不要なもの 相続、包括遺贈、持分放棄、合併、会社分割、遺産分割、遺留分減殺、相続分の贈与(売買)、時効取得、調停・裁判に基づく財産分与、特別縁故者への財産分与、従前の所有権登記名義人への真正な登記名義の回復、委任の終了、(法定)解除

※農地について「相続」を登記原因としてAからBへの所有権移転登記がなされている場合に、これをB・Cの共有名義と更正する登記を申請するときは、農地法所定の許可を証する情報を提供することを要しない。

■農地の売買契約

中間省略許可申請の無効  【最判昭和38.11.12】 

売主Aと買主B間でA所有農地の売買契約がある。さらにその後買主Bと転買人C間で契約がある。この場合にAC間に、売買契約があるとしてこれに基づく所有権移転につき許可がなされたとしても、右農地の所有権をAからCへ移転させようとする直接の合意(契約)がないので、本体の契約がない以上右農地の所有権がAからCへ移転することもない。そうすると効力がないことを目的とする「特約」も無効となる。したがって、CはAに対し「3条許可に協力せよ」と請求できない。

買主の地位の譲渡として有効  【千葉地判昭和47.3.8】 

A所有農地をBが5条許可を条件に売買契約、Bは代金全額をAに支払い、Bのために仮登記を経由した。BはCに対し、売買契約上の買主としての一切の権利義務を譲渡し、仮登記の付記登記を経由したうえ、Aにその旨通知した。BはAに対する代金全額を完済、Cに売買契約上の買主の地位を譲渡した当時にはAに対する債務は残存していなかった。右譲渡をAに対抗するためには債権譲渡に準じ、売主Aの承諾があるか、またはこれに対する通知をなせばたりる。

買主の地位の売買として有効  【浦和地判昭和48.9.12】

A所有農地をBが5条許可を条件に売買、契約書には特約としてBが他に転売したときは、Aは直接転買人のために許可申請手続をし、右許可がされたときは直接転買人のために直接移転登記をするという条項がある。Bは代金270万円全額をAに支払うとともに、条件付移転仮登記をした。その後CはBとの間で知事の許可を条件として代金600万円で売買し、右仮登記に権利移転の付記登記を経由した。右のような特約があるときは、売主において買主がその買主の地位を第三者に譲渡することをあらかじめ承諾し、右譲渡がされたときは特に他人の物の売買である旨が明確にされている場合その他の特段の事情が存する場合を除いては、農地の自体の売買ではなく買主の地位の売買である。

買主の地位の移転として有効  【水戸地判昭和52.6.14】 

一般に契約当事者は特段の事情がない限り、効力がないことを目的とする合意をする意思はないと解すべきであるから、知事の許可を停止条件とする農地の所有権移転の合意が存することを前提として、さらに買主と第三者の間に右農地の所有権移転を目的とする契約が締結され、元の売主が右所有権移転を承諾し、なんらの不利益を被らない場合には、当事者間に法律上契約上の地位の譲渡という明確な意識がなくとも、農地自体の転売ではなく買主の地位の移転であると解するのが相当である。

最判昭和38.9.3】 買主の権利の譲渡として有効

売主Aと買主B間でA所有農地をB(サラリーマン)が居住目的で購入し、Cに耕作させる。Bは所期の目的を断念し、Cに買主の権利を譲渡することとし、代金をCから受領した。その後CはA方を訪れ、Bから買主の地位を譲り受けるにつきAの了解を求め、領収書にAはなんら異議をとどめず捺印をした。次に許可申請書にAから捺印をもらい申請をした。農地の売買契約上の「買主の権利の譲渡」として有効。


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